Column

木造
古民家改修(1)

古民家を生かした改修

古民家を訪れると気持ちも解放され、寛いで爽やかな心地よさを感じる。古民家は長い時間を経て気候や日照などのパッシブ(太陽光や風など自然のエネルギーの受身的な利用)な考え方を培い洗練されている。惜しむらくはクーラや家電製品などアクティブ(効率を重視した機械の利用)な設備に慣れ親しんだ私たちが、古民家での生活は中々難しいと感じてしまうことである。戦後、日本の住宅の平均寿命が27年なのに対し、築92年のこの古民家は竣工当時の佇まいを良く残している。その佇まいと大きな特徴である和室廻りを完全に残しながら現代の生活に対応した改修を試みた。この改修された古民家では実際の生活の中で昔の様々なパッシブな考え方を感じ、そして学ぶことが出来る。

ではなぜ古民家が92年間もの長きに渡り良好な状態を保てたのだろうか?

改修前の古民家

改修前の古民家

古民家の図面作成は推理小説

古民家の読み解きは推理小説と似ていて、昔の匠と会話するようで楽しい作業である。

昔の建物は尺貫法で造られていて、1尺は約303ミリ、通常は一間(いっけん)を6尺としたモジュール(基本寸法)のグリッド(方眼またはマス目)に合うように造られるのが基本である。計測をしてみると、柱と柱の間(柱間)は6尺、そして柱間が3尺の柱などを図面に描けば大まかな線図ができる。それぞれの柱太さの寸法を測り、壁と建具の位置と部屋の用途を記入すれば平面図はでき上がる。断面方向の寸法は木割りの法則によりほぼ決まっている。地盤から床までの高さ、内法高さ(床から建具の高さ)と天井高さ、そして更に詳細に測れば大凡終了する。最後に屋根の勾配と軒の出を測れば立面図も出来上がる。現代の住宅とは異なりモジュールに従った柱や梁が現し(隠されず見えている)で分かりやすく、実測できない部分も推測することが可能だ。昔の大工は板の上に墨で柱と壁と建具の位置を描き、棒矩計図(ぼうかなばかりず:縦方向の詳細な寸法を描いた図)を板に描けばそれだけで仕様が決まり、あとは大工の感性と技で細部を決めながら建てる。古民家の基本的な形や佇まいが地方毎に同じなのは、風土を捉えた上で継承していくこのような原理原則があったからである。

古民家の大きな屋根

屋根は登呂遺跡のような竪穴住居の地面に掛けられた屋根から始まり、日本最古の古民家と言われている兵庫県の箱木家千年家は軒先の高さが人の高さ程しかない。その後、時代と共に軒先きの高さは高くなっている。「大きな屋根の下に人々の生活を感じる。」古民家にはこの言葉が似合っているように、大きな寄せ棟は住まい全体を覆っている。元々は茅葺が瓦屋根に変化したため、茅葺ほどではないが7寸(現代の通常の瓦屋根の勾配は4寸5分)以上の急勾配で大きい。この古民家も同じで主屋と下屋に掛けられた屋根が深い軒で住まいの壁や雨戸を風雨から長い間守っている。

改修後の古民家

改修後の古民家

PAGE TOP