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木造
古民家改修(5)〜瓦の再利用〜

和瓦
関東大震災の被害に和瓦の屋根からの落下がある。それまでの瓦葺きは土葺きといい、下地に土を盛って瓦を葺く。震災後は地震の揺れで落ちないように瓦桟に瓦を引っ掛けた葺き方に変わった。また当時の瓦は小さな達磨窯で焼かれ、製品精度が良くないために重なりが悪く相変わらず土を使ってガタつかないようにしていた。当時はアスファルトを含浸させた防水紙(アスファルトルーフィング)がなく、土居葺き(どいぶき)といい薄い杉板などを貼って防水層としていた。この古民家を例にとれば、土居葺きは紫外線劣化する現代の防水層より耐久性があるかもしれない。

この古民家では92年間瓦の葺き替えをしていない。近隣で解体した家屋の瓦を使って部分補修している程度である。当時の瓦も現代と同じ引掛け桟瓦だが、北面は土葺きの引っ掛けのない形の瓦であった。当時の瓦は焼成温度が低く吸水性が高く北面の瓦は凍害を受け易かった。凍害で割れた瓦を取替えるためには引っ掛けのない瓦の方が取替えやすかったからではないか。

新しく葺替えた瓦は吸水性が低く製品精度が良い無釉薬で二度焼きの「いぶし瓦」である。また銅線で下地へ結束するなど平部分と棟の耐風性や耐震性を考慮している。

瓦屋根の美しさは葺いた屋根の重なりが斜めから見て直線的に見えることと、軒先の美しさである。アプローチから見える南側と西側の軒先きの樋を付けず、雨落とし用の玉砂利敷き溝や、母屋からの雨で下屋の瓦が傷まないように雨受け瓦を付けている。北面と東面の屋根には雨樋をつけている。和瓦の屋根は、いぶし銀の色が青い空や曇り空に従い青グレーの表情が変わり、周囲の自然に溶け込み美しい風景となっている。

瓦葺きと下屋の雨受け瓦

瓦葺きと下屋の雨受け瓦

雨受け溝

雨受け溝

瓦の再利用
古民家はメンテナンスなどで不要になった部材は燃やして灰にしたり、そのまま土に還すことが可能である。先人の考えを踏襲して、解体撤去した部材は敷地内処分を原則とした。幸いにも敷地が広く仮置き場所もあったのでそれが可能となった。

解体した瓦は庭の敷瓦や縦使いの土留めなどと共に、東側の崖からの表土流出防止として瓦積み塀を設けた。これは建主の友人の家族が数日かけて丹念に積み上げ、見事に美しい瓦積みとなった。現在も上部の表土が流れないように瓦に似合う深い緑が美しく育てやすい植物の玉竜をグランドカバーとして植えたり、これからもメンテナンスをしながら改善されていく楽しみがある。

土流出防止瓦積み

土流出防止瓦積み

瓦積みと上部の押えモルタル

瓦積みと上部の押えモルタル

あたらしい快適な住まい〜冬暖かく、夏涼しくする [1]
古民家改修(1)
MN7019IZ邸

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