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暮らし木造温熱環境
あたらしい快適な住まい〜冬暖かく、夏涼しくする [5]

(7)冬暖かく、夏涼しくする工夫②
a)家の断熱性能を知る
日本の住まいの「旧省エネ基準」が1980年に施行されてから1992年の「新省エネ基準」、1999年の「次世代省エネ基準」と変遷を経て、2013年の「平成25年省エネ基準」では「断熱性能」に「一次エネルギー消費量」と「冷房期の平均日射熱取得率」が追加され、更に2020年にはこの基準が住宅への義務化予定でしたが、見送られて、建て主へ断熱性能値等を示して説明をする制度に留めています。
1980年以前の住まいのほとんどには断熱材が入っていません。また、アルミサッシのガラスは単板でしたが、2000年以降の住まいには複層ガラスが設置されています。ただし、結露しない断熱の高いアルミサッシの室内側に樹脂が取り付けられたりした枠は最近になって増えてきました。
b)窓の改修
1980年以降の住まいの外壁には断熱材が入っています。その場合窓から逃げる熱の量は外壁の4倍以上大きくなります。家の断熱性能を高くしたいならば、まずは窓の断熱性能を上げることから始めましょう。
①ガラスを取り替える。
サッシ枠をそのままとし単板ガラスを断熱性の高い複層ガラスへ取り替えることです。ガラス部分から逃げる熱の量が半分になります。既存のサッシに複層ガラスが取り付けられない場合には厚さが6.2ミリの真空ガラスもあります。断熱性のないアルミサッシの場合はガラスを替えてもサッシの枠が結露してしまいます。
②インナーサッシを取り付ける
窓の内側にもう一枚窓を取り付けます。木製の額縁に簡単に取り付ける樹脂サッシが一般的です。外部側のサッシの結露も無くなり、室内側に冷やされた空気の下降気流がなくなり、床面の風がなくなります。
③サッシを取り替える
サッシを断熱性能の高いサッシに取り替えることが比較的簡単に行えるようになりました。既存のサッシ枠を残し、外壁を壊すことなくカバー工法で新たに樹脂サッシを取り付けることができます。可塑剤を使用していない樹脂サッシの耐候性はアルミサッシと同程度です。ここまでするだけで、だいぶ暖かくなり、光熱費も削減されます。
c)住宅の躯体の断熱改修
躯体の断熱改修は仕上げ材を一度撤去しなければならないのでコストがかかります。外壁の改修や、間取りを変えるようなリフォームまたは耐震改修などと合わせて計画した方が良いです。(4)これからの住まい:高断熱・高機密・計画歓喜でお話ししたように、断熱改修する場合は必ず湿気を外部へ逃がす工夫が必要になります。それを怠ると建物自体を腐朽菌などで痛めてしまいかねません。
①天井の断熱補強(夏の対策)
夏、2階の天井にフライパンでもあるように輻射熱(遠赤外線)を感じることがあると思います。断熱材が入っていても同じことが起きる場合もあります。夏の太陽は高度も高く朝から午後3時頃まで屋根面は暖められます。少し前までの住まいの天井の断熱材の厚さは10cm程度です。この厚さでは断熱材の中の空気も暖まってしまい、暖められた断熱材から輻射熱が発生するため、天井がフライパンのようになるのです。断熱材が入っていない場合は小屋裏の空気が直ぐに温まってしまい午前中から暑くなります。小屋裏には換気口がある場合でも、空気はすぐ暖まってしまいますから換気回数が追いつかず暖まってしまいます。
小屋裏の断熱材の厚さは25cmくらい必要になります。15cmは太陽で暖まり、残りの10cmで輻射熱を遮るようにします。小屋裏の空間が大きければ、厚さ25cmの断熱材を入れるのは可能だと思います。その際に注意しなければいけないのは換気口を塞がないことです。
②床の断熱(和室の場合)
畳の断熱性能は10cm厚のグラスウールの約1/5です。同じ厚さの木材と同じ位しかありません。畳床を稲わらではなく断熱性能の良い素材を使った畳もありますが、それでも性能は1/2程度です。
・畳を揚げれば床下地の板が現れます。その上にポリエチレンシート0.15mmの気密シートを敷けば隙間対策にはなります。畳下に新聞紙を敷くことでも気密効果はあります。畳下に断熱材を入れる場合は、床下地を一度撤去して根太間にネオマフォームジュピー厚さ40ミリ(推奨する床用断熱材)等を入れ、再度床下地、畳を戻して完了です。
③床の断熱改修(洋室の場合)
洋室の場合はじゅうたん敷きこみであれば、じゅうたを剥
がせば良いですが、フローリングの場合は壁下についてい
巾木を取らないとならず、簡単ではありません。
c)隙間風対策
断熱材が入っていても寒い、特に床が冷たいと感じる住まいがあると思います。床周辺の室温と天井の室温が明らかに異なる場合は断熱材不足か、隙間風があるからです。コンセント、巾木や畳の敷居に手をかざしてみてください。風を感じるようでしたら、隙間風があります。
隙間風があるからといって即住まい全体の気密性を高める必要は必ずしもありません。冬、1階床レベルからの隙間風は室内で暖められて天井から屋根へと抜けていきます。1階床レベルの気密性を高めれば、上昇気流は起きませんし、たとえ天井面の気密性が低くても、空気は外部へ抜け難くなります。換気扇を回した時に給気口がなければ換気されないのと同じ原理です。
d)床下の隙間があれば間仕切りは外壁と同じ
室内の間仕切り壁には断熱材が入っていません。しかし、床下から間仕切り壁に隙間風が入り、天井へ抜けていけば常に外気の通り道になり、熱の移動は外壁と同じになります。間仕切り壁の下、土台と床の間に断熱材を充填するか
床下地を断熱材の中まで伸ばすことで隙間風は解消します。(ウ)床の全面断熱改修
壁下の巾木を外し、床下地を一度撤去して根太間にネオマフォームジュピー厚さ40ミリ(推奨する床用断熱材)等を入れ、再度床下地、フローリングを貼り、巾木を取り付ければ良いですが、壁の仕上げも道連れとして改修しなければならない場合もあります。そして、外壁面に断熱材が入っているならば、床全体の断熱改修は効果が大きい改修になります。

あたらしい快適な住まい〜冬暖かく、夏涼しくする [6]
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MI1498OO邸

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