(5)住まいの環境
ここからは身の廻りのことにについて話を進めたいと思います。
a)室内環境
人の一生を90年と仮定すると、大凡80年間は建物中にいると言われています。その中で住まいの中で過ごす時間も60年間位でしょうか。人は自然環境の中ではなく、住まいという人工的な環境の中で暮らしています。改めて室内環境の面から住まいを見直してみましょう。
b)最適な室内環境(冬の場合)
冬の室内温度は18℃~20℃が最適と言われています。しかし、それでは寒いというのが実感だと思います。でも5月気候では外気温が20℃の時はとても快適です。この違いは、5月は地面も建物も全てが20℃だからです。冬の20℃が寒く感じるのは、住まいの床、壁そして天井がかなり冷たいからです。住まいに断熱材を入れることは住まいを暖かく保つことにもなります。放射温度計で床や壁そして天井の表面温度を直接測定することができます。
c)最適な室内環境(夏の場合)
夏の室内温度で重要なのは外気温度と5℃以上の差をつけないということです。冬の場合は室内から外に出るときにコートなどを着ることで体温を保つ工夫が出来ます。しかし夏は出かける際の服装との差はそれほどありません。外気と室内の温度差が直接の温度差になってしまいます。
温度差を少なくするためには、外気の相対湿度が60%以下であれば、窓を開けて風を通す方が良いでしょう。相対湿度が80%以上になると温度は高めでも、相対湿度を60%以下に下げれば快適ですが、壁掛けエアコンではそこまで湿度を下げる能力がありません。どうしても温度設定を低くしてしまうことになります。相対湿度が高いと風が吹いても汗が乾き難く、体の表面温度を下げることができなくなります。熱中症と言いますが、温度が高いだけではなく、相対湿度が高いため、身体から放熱されず危険な状態になるのです。昭和の時代には熱中症ではなく日射病でした。現在ほど外気温難くはないので日差しを受け体調不良になるために水分補給をして木陰で休めば回復しました。
d)温度のバリアフリー
住まいの中に段差のない住まいをバリアフリー住宅と言います。冬、使わない部屋は暖房せず、家の
中に温度差が生じる住まいが多いために、住まいに温度差がない住まいを温度のバリアフリー住宅と呼んでいます。また、①居間全体を暖めた場合と②居間を暖めずにコタツやホットカーペットのみでの過ごす場合を比較しますと、高齢者の活動量と筋肉量が明らかに違います。前者①は運動量と筋肉量のレベルが高いことが明らかになっています。それはじっとせず、よく動いているからです。小さなことでも毎日の積み重ねで結果が異なってしまっているわけです。
e)冬のヒートショック※1
①温度差
冬のヒートショックはご存知だと思いますが、ヒートショックは医学用語ではないため正確な統計はありませんが、東京都医療長寿センター研究所によれば、2011年の1年間で約17,000人もの人々がヒートショックで亡くなっています。その死亡者数は交通事故による死亡者数4,611人の約3.7倍です。寒さを我慢して健康を損なうことは避けた方が良いと思います。
②熱中症
また最近の慶應大学の研究により、私たちが想像をしていたヒートショックの原因のは脳梗塞や心筋梗塞ではなく、熱中症であるとの結果が導き出されています。
人の体には温感点と冷感点がああります。命に関わる冷感点が温感点の3倍多く有り、温感点は温度の変化を感じても、変化は感じません。そのために40度近い湯船に肩まで浸かると10分程度で体温は38℃まで上昇をしてしまいます。真夏の暑さを想像すれば、38℃の体温は熱中症だとわかります。湯船の中で熱中症による意識が朦朧とすることが死へとつながる危険性があることがわかりました。
毎日湯に浸かり体温を上げ、血管を広げることは抵抗力を高めて身体に良いことは確認されていますが、湯温が38℃の湯船に浸かる時間を10分以内とすることが重要でのようです。
WHO(世界保健機関)の2018年新ガイドラインによると、「居住者を健康に対する悪影響から守るためには、家の室内温度は十分に高くあるべきである。温帯の、もしくは寒い気候の国々に対しては、寒い季節に一般の人々の健康を守るために安全でバランスのとれた室温として、18℃が提案された。」とあります。
また、室温が低いと体を温めるために熱い湯温に浸かりたくなります。それを回避するためにも室温を高く保つように住まいの温熱環境は大切です。
※1東京都健康長寿医療センター研究
f)寒い部屋で凍死:低体温が危険!
10℃以下の寒い部屋で寝ていた場合、呼吸によって肺が直接冷やされ、体温が35℃台まで低下してしまうことがあります。このように体温が下がってしまうと、寝ている間に突然死する、いわば「ぽかぽか布団の中で凍死」のようなケースに陥る可能性があります。
わずか1.5℃の体温低下が、免疫機能の低下を引き起こして感染症を増加させるだけでなく、重篤な心臓疾患のリスクを2~3倍に上げることが分かっています。
g)夏の温度差で体調を崩す
夏の最適な室内環境は外気温との差を5℃以内にすることが理想です。温度差が大きい環境下で室内と外部の出入りを繰り返すと交感神経が働き、その度のエネルギー消費量は大きく体力を消耗し、夏バテも起こりやすくなります。
h)居室の断熱改修と高齢者の健康※2
断熱改修をした住まいは睡眠やアレルギー症状そして血圧などが改善されたという報告もあります。
※2東京都健康長寿医療センター研究
あたらしい快適な住まい〜冬暖かく、夏涼しくする [4]
あたらしい快適な住まい〜冬暖かく、夏涼しくする [2]
MI7120SU邸