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ED3504TE邸

リノベーション

マンションという言葉の広告宣伝的な感じには違和感があります。建築基準法で定義されている共同住宅も古い言葉のようでしっくりしません。ルールを定めて集まって住むのですから、集合住宅が良いと思います。
 利便性が良く広い空地と緑があるのが集合住宅の利点です。この集合住宅の敷地の60%が空地で、災害時には住人全てが外に出ることができます。各棟の向きが工夫されていて窓のカーテンを閉めずに暮らすこともでき、死角になる通路も少なくなり防犯上効果的です。
 この住戸は北東の角にあり、南向ではないですが朝日と共に1日が始まります。北向の窓からは離れた隣棟の安定した反射光が住戸の中に入り心地良い環境になります。敷地内の空地と共に重要なのが、散策路や広場そして緑地の公園等が近くにあり気分転換等ができることです。
 夫婦二人の暮らしに合わせて、4LDKを1LDK+ウォークインクロゼット3室(靴、食品、衣服)へリノベーションしています。専用部分ではないアルミサッシは交換できないので、サッシの内側へ木製のガラス戸を付け、外壁の内側に断熱材を充填した壁を追加して断熱性能を強化しています。2面にバルコニーと窓があり、窓の掃除の危険もなく通風も十分です。室内も引戸主体で風通しを良くし、通常は光が入らないトイレや洗面所へ外の明かりが入る工夫をして、昼間に照明を付けないでも使えるようにしています。朝の洗面所での身支度では外の天気が分かります。
 白を基調とした内装にオレンジ色と茶色の造付家具、そして玄関はブルーの扉と茶色の壁として色でアクセントをつけています。また明治時代から代々使われてきた桐箪笥や蠅張付き水屋箪笥そして新しい岩谷堂箪笥などを置き、住む人の個性が出ています。また桐箪笥は空気に触れて黒ずむので木を染色して、カメラの収納など防湿効果を生かした日常使いをしています。
 当初の暖房設備は深夜電力による蓄熱暖房機で、一日中20℃と一定な室温で夜中に起きても寒くありません。2011年の東日本大震災以降は原子力発電を稼働させないために、電気を通電するだけのCOP=1の深夜電力使用の蓄熱暖房機からCOP=3のヒートポンプによる常時輻射冷暖房機(PS-HRC)へ取り替えました。また、居間の本箱を飾り棚としても使える本棚と使いごごちが良い無垢材の机に造り替えました。造り込みは最小限とし、時と共に変化する住まいを楽しむことも暮らしです。

*COP:エネルギー消費効率を表します。COP=3の場合、製品が消費する電力量に対し3倍の能力がある。

場所
東京都江戸川区
用途
集合住宅
種別
リノベーション
構造
SRC造23階建
規模
82㎡
竣工
2004年(1983年竣工)

施工:田中工務店
コラム:本棚考

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