2つの異なる福祉施設のための鉄骨造の建物で、快適性とメンテナンス性を追求しています。
鉄骨造の建物の断熱は難しく、理由は鉄骨が熱橋(ヒートブリッジ:熱を伝える部位)になるので、結露が生じやすくカビと共に鉄部を錆びさせてしまうからです。ここで使われているグラスウール断熱材材だけでは鉄部を包み込むことができないので、外壁はゾノトライト系ケイ酸カルシウム版(断熱バウビオ)の断熱を全面に貼り、鉄部を包み込んで結露対策をしています。屋根部分には付加断熱ができないので(建築基準法で下地を鉄などの不燃材としなければなりません)室内側の熱を伝えないようにアルミ遮熱材(ラミパック)で熱線(遠赤外線)を遮断して結露を防いでいます。
2階は知的障害児童が放課後から夕方まで過ごす施設です。動きの邪魔にならない天井型ヒートポンプによる冷暖房設備にしています。1階は要介護高齢者が朝から夜まで、時には短期宿泊する施設ですので、冬季は太陽光により屋根でプレヒートさせた空気を床下に送り床面を温めています。夏季の冷房が苦手な老人も多いため、輻射冷暖房機(遠赤外線で温める:クール暖)による冷房でその不快感を解消させています。またインフルエンザなどのウイルスを殺菌する殺菌脱臭装置(ユービックス)を熱交換型換気扇(全熱型)に組み込んでいます。
1階の施設の木部およびフローリングは北米のオーク材、壁と天井はシックイペイント塗とし、揮発性有機溶剤の発生が少なくなります。2階の木部は同様ですが、壁と天井はいたずら書きやボールを当てた時の跡を消しやすい塗料で仕上げています。どうしても有機溶剤の揮発があるので、熱交換型換気扇で常時換気しています。また両施設共に壁と天井にはゾノトライト系ケイ酸カルシウム版(調湿バウビオ)を貼り調湿と消臭をしています。
外部は断熱性に優れた複層ガラスの樹脂サッシと庇を出すことで日射のコントロールをしています。特に西日は厳しいために庇を深くして、2階は壁面が西日で暖められないように木製のルーバーを全面につけています。
また外壁の仕上げ欧州で100年くらい前からピグメント(顔料)として使われている無機質塗料で仕上げています。静電気が生じる石油系の塗料とは異なり汚れの付着がなく、紫外線劣化がないので定期的な塗替えが不要です。更に、タッチアップしても全くわかりません。
- 場所
- 埼玉県三郷市
- 用途
- 福祉施設
- 種別
- 新築
- 構造
- S造2階建
- 敷地
- 483㎡
- 規模
- 283㎡
- 竣工
- 2014年
施工:和光建設
コラム:夏の住まいの快適性の指標について